満月の夜の欲情。其のニ

其れが、あの噂の美女だったなんて、その時私は見た事も無かったのだから
知る良しも無く、ただもう不安ばかりが先にたちました。
夜の闇が降りたと言うほどは無いけれど、水平線近くの夕焼けの色も紫色に変り
初めて、点在する瀬戸内海の島影も殆んど黒いシルエットになっていました。

私は警察ではないし、夜の海で泳いではいけないという法律が有る訳でもないし、
放って置けばいいだけだったのかも知れませんが、私にだって島の人間としての
素朴な人情と海の男としての経験も有ったわけで、
やっぱり知らんぷりは出来なかったのです。

やがて白いキャップの頭は進むのをやめ、仰向けに成って浮かんでいるだけになりました。
ちょつと余裕たっぷりの風情です。

スイミングスクールやフィットネスクラブがどこにでも現代と違って、あの頃泳ぎの上手な
都会のお嬢様なんて、滅多にいるものではありませんでした。
やっぱり、泳ぎ慣れた地元の娘だろうか・・・そんな風に思えてくると、
今度は少し腹が立ってきました。人騒がせなことをしやがって、と。

面倒だから帰ってしまおうか、と思いかけたその時、白いキャップの横から手が中に伸びて、
ばたつかせ始めたのです。

大変だぁ・・・!
陽が沈んで水温が下がってきているから、足がつったのでしょう。
そんなことになりゃしないかと、考えてはいたのです。
もう迷ったり怒ったりしている場合ではありません。直ぐに海に飛び込みました。

海水パンツは穿いたままでした。家が近いから、その上にアロハシャツなんかを着ただけで
行き帰りするのが、我々漁師仲間の習慣でした。

たぶん、岸から三百メートルくらい離れていたと思います。
夢中でクロールの抜き手を繰り返して進み、半分以上来た処で顔を上げると、
その女〈ひと〉は急に手の動きをやめて沈んでゆく様にみえました。

やばい・・・!さらに手のかきを早めながら、今度は前の方も見ながら進みました。

あとニ、三十メートルという処まで来た時、沈んでいた体がまた浮かんできました。
よかった、と安心してすこし泳ぎの手を緩めながら進むと、
またちょっと手をばたつかせたかと思うと、すぐに前よりもあっけない感じで沈んで行きました。

今度こそ絶対絶命です。ようやく其処に辿り着き、思い切り息を吸い込んでから私は、
垂直に潜ってゆきました。海の中は、もうすっかり夜の闇の色でしたが、
彼女の体は五メートルくらいの処で直ぐに見つかりました。

動かなくなったその体の手足の周りには夜光虫がキラキラ光っていて、
まるで幻想的な絵を見ているようでした。
抱きとめて水面に浮かび上がり、その美しい顔に感激している余裕も無く、
血の気の引いた頬をひっぱたきました。何の反応もありません。

そうとう水を飲んで、呼吸が停止しています。これはもう死んでしまうかもしれない。
そう思うと、恐ろしいと言うより、情けなく泣きたくなって来ました。
仕事を終えたばかりで、監視員の気分がまだ残っていたのでしょうか。

彼女の顎に腕をまわしながら、背泳ぎで岸まで戻ってきました。
海水浴場とは岩場を挟んで隣り側の、誰も居ないちいさな浜辺でした。

砂の上に寝かせて口移しの人工呼吸をする段に成って私は、
漸く今までに見たことも無いような美貌に、慄きました。

周りに人が居なかったからでしょうか、口移しを続けていると、忽ち股間のものが
固くなって来ました。その時私はもう、殆んどその女〈ひと〉を蘇生させることを
諦めて居た訳で、言いにくいのですが、是はちょつと死体愛玩の性向と似て
いたかもしれません。

眠れる美女、というか、美女の死体、です。
もちろん私がそれ以後そういう趣味に走っていったわけではありませんが、
世の中のそう言う人達の気持ちも、多少は判るような気がします。

誰もいない夜の浜辺で、此の世のものとは思えないほどの美しい仮死状態の
女性と向き合っている。その時の怪しい胸騒ぎを抑え切れなかった自分自身に
恐ろしさ覚えたのは、そのずっと後の事でした。

漁協の水難救助の講習会などで、心肺蘇生術の訓練を受けていた私は、
仮死状態でも諦めず一時間以上心臓マッサージや人工呼吸をして生き返った話など
を聞いて降りましたし、私の体力が続く限り蘇生術を施す様に訓練されて居りましたので、
僅かな奇跡を信じ口移しの人口呼吸と心臓マッサージとを、
一時間以上繰り返し続けました。

生き返って欲しいと言う願いも必死なくらいあったのですが、怪しい胸騒ぎも増すばかりで、
途中からは片方の手で口を押さえながら、もう一方の手で水着の下の乳房を
弄ったりしていました。それもマッサージの一つだ、と自分に言い訳を作りながら。

さらには、口移しの際に足をすこし拡げさせ、その間に自分の下半身を置いて股間の
硬いものを、彼女の柔らかいその部分に押し付けていったりもしました。

我ながら何て事をしているんだ、と自分を叱ってみても、
一旦してしまうともう止められなく成って仕舞いました。
 
しかし、やっぱりこれも言い訳になるのですが、そういう興奮も有ったからこそ、
一時間以上も休まず続ける事が出来たのかも知れないのです。実際、どれくらいの
時間だったかは、本当は良く判らないのです。とにかく気が遠くなるくらい、
延々とそれを繰り返して居た訳です。

そして最後に心臓マッサージでそこをぐいと押さえた時、彼女の口からトロリと潮水が
こぼれ出て、胸に手をあてると心臓が鼓動を始めていました。
両手で挟むようにしてニ、三回頬を叩きました。

すると体がぴくっと震え、さらに勢いよく口から潮水が溢れ出て、
そのあとようやく彼女の大きな目が開きました。
同時に、小さく口が開いたのは、あっ、と驚きの声を上げた積もりだったのでしょうか。

彼女が本当に声を出したのは、それから暫らく経って、
「なあんだぁ・・・」と呟いたのでした。
おいおい、それはないだろう、人の苦労も知らないで。と、ムッと来る処でしょうが、
私はなんだかさっきの悪戯が許された様な気分で、思わず笑ってしまいました。

彼女もまた、はにかんだように、
少し血の気の戻った形の良い唇を小さくほころばせていました。
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