色狂い。其の五


聞いてる私の方が辛く苦しく成ってきます。動物が狂って居るように
悲鳴を上げるのです。しかも其れが延々と続きます。
其れは恐ろしいほどでその迫力に言葉も有りません。

「是は商売用に売られている物ではありません。
 本物ですよ、貴女自身だとは思いませんか」
と彼に言われ、私は自分の耳を疑いました。とっても信じられません。
半信半疑でもう一度聞いてみましたが、それでも信じられませんでした。
しかし後で落ち着いてよく聞いてみますと、時々うわ言の様に
しやべる言葉が私のようです。

やがて自分なのだと言う事がはっきりした時、一度に胸が熱くなり、
涙が止め処も無く流れ出し、是ほどまでに成れる自分の体が
心から素晴らしく思えて神様へ感謝を致しました。
女の全てがこれ程に性の歓びを味わえるならどんなに全ての
人間関係がよくなるだろうと思いました。

神は凡人を愛して下さるそうです。私は神の落し子なのでしょうか。
だから私の肉体はこんなにまでヨク成るのでしょうか。セックスの時、
失神を繰り返す事にそう思い感謝するのです。
私の身体は普通ではない様な気が致します。
言葉では言いようのない強烈な快感に
「何でこんなに良くなるのでしょう、判らない、不思議だわ」
と思わず呟いてしまいます。

この言葉は彼との行為中無意識のうちに必ず一度は口にするそうです。
「なんで・・・」と言っても男根が私の身体の中に入り動くから良くなるのが
当たり前だと思われるでしょうが。私にとっては、主人を始め他の男性からは
強烈なオーガスムを得た事は一度もないのです。
勿論失神した事など有りません。

同じ事をして居るのに余りにもその違いが大きいのですから、何故そんなに
相手の男性によって違うのか不思議でならないのです。

ひとたび彼の物が入ると失神を繰り返し、
二時間なら二時間イキぱなしに成る私にとっては、
それは魔法にかけられたとしか、言いようのない不可解な事なのです。

イキぱなしとは大袈裟なと思われるでしょうが、私の立場から見れば、
それは決して大袈裟な事では有りません。


私なりに良く成る理由を考えて見まするに、先ず第一に男根の違いです。
私も何人かの男根を見て来ましたが、人それぞれに違うものです。
彼の物は、形がとっても良いのです。上向きに反りあがり、
長くて、太くて、私の感じ易い処に巧く当たるようです。良く馴染む感じです。
適度の深いクビレが有り、血管が膨れ上がり、非常に固くて立派で
力強さと美しささえ感じます。

長さは二つの手で握っても亀頭の部分が余るほど長く、太さもやや太め、
彼のより太いものも見ましたが、
太くて短く形もただずんぐりしていて、脂肪の塊のようでした。
要するの彼の物は全体のバランスが取れて居るのです。

第二に考えられる事は、挿入時間の長いことです。
主人は特に短かったのですが、他の人も精々十五分位でした。
それに比べると彼は普通で、二時間、長いときは三時間にも成ります。
更に言えますのは、そんな長い時間でも動きっぱなしになのです。
途中休む事も無く、腰をリズミカルに動かします。
彼に言わせますと、私が失神中にでも殆ど一時的に止まる事は有っても
動き続けているそうです。
動かすというよりひとりでに腰が前後に動いて居ると言うのです。

動きも他の人と少し違って、変化が有ります。動き続けて居るから
快感が覚めずに続き、簡単に次ぎのオーガスムに達してしまうのでしょう。
イキッぱなしの原因は此処に有ると思います。

その他、時々陰部を舐めて呉れるのですが、是も凄くお上手で
イッテしまう事が有ります。また情熱的で集中するので、
お互いに夢中になって没頭できる点、それに思いやりが深く、
何時も私の立場に成ってくれます。
これに比べ他の男性は時間が短い為に変化に乏しく、
自分本位で射精してしまえば、それで終りなのです。

一方、精神的な面も充分にあると思われます。私は最初から彼に好意を抱き、
私の方から彼に誘いをかけましたので、初夜から激しく燃えたのでしょう。
他の男性は全て受身とか無理矢理だった事もあると思うのです。

色々とその理由を考えてみましたが、
私に取っては同じ事をして居るのにこんなにまで違いが有るのは、
矢張り何か神秘的な魔法の棒としか言い様が有りません。


彼の男根に狂い、夢まで見続けながら彼を追い回して、
もうどうする事も出来ません。 完全に彼の男根の奴隷と成って居るのです。

入れてくれさえ下されば、
お金も洋服も何もいらないはと言う気持ちに成ってしまうのです。

もう死んでも悔いは無いと言う気持ちに成り、涙がぽろぽろと流れます。

私はこの四年間、明けても暮れても彼に逢ってセックスする事だけを
考えて生きて参りました。悲しみや苦しみもたくさんありましたが、
反面喜びも有りました。

私が自らを色狂いと思いましたのはこの年齢で毎日したいと思い
耐えられなくなる強い性欲、ニ、三日旅行すれば朝に夜に彼を求める
性への強い欲求がそう思わせたのです。
異常ではないかと思っております。

セックスだけが人生ではない、生き甲斐を他に作りなさい、と彼は申します。
理屈では判っていても身体が求めてしまうのです。
しかしこの四年間程充実していた期間も無かったと思います。

主人との不幸な別れの後、この生き甲斐が無ければ私の人生は
四十八歳で終っていたと思います。

他の女性から見れば淫らなとか、色気違いだと非難されると思いますが。
私の身体は神秘的な要素が備わっていて、どうする事も出来ないのです。

彼を愛するようになって、一番変化したのは私の性格が明るくなった事であり、
身体的には性器がふくよかになり、乳房やクリトリスも大変豊満に成熟
したように思います。是は彼によって作り込まれた芸術品だとさえ思うのです。

にこにこしている事が多くなり、年輩の方から
「貴女は美人ではないが、笑顔がとっても美しい人ね」と声を掛けられます。
身体も年齢より若く見えるそうです。それは充分に性の満足感を得て、
今の生活がきらめいて居るからだと自分なりに考えて居ります。

この先、私が年老いて死ぬ時、彼と出会って性に目覚めさせてもらい、
毎日性器を濡らし、彼を求めて止まないこの時期が、私の人生に取って
最も美しく光り輝いて居た時期で有ったと懐かしく思うことでしょう。
END
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