菊枝は、もうもの言う事も忘れて、只管見つめていたが、
ギラギラと光る眼差しで、隆史を見て、
「隆史さん、あたし・・・気が狂いそうなの、あんたには、あたしが、
こんなにあんたの事を思い焦がれて居るのが、
判ってくれないの、あぁぁ、たまらないよ・・・・」
と、言うなり、隆史の身体に取り付き、片手は、ペニスを握り締めた。
『何をするんだ。はなせ、はなせ・・・』
「いやだよ、これを、あたしに呉れなきゃ・・・」
武者ぶりつく女を、力任せに突き放し、隆史は浴室を飛び出したのである。
何か寝苦しくて、ふっと夜中に目を覚ました隆史は、
自分の一物を指で弄んでいるのを知った。男根は、熱しきって最大限に勃起していた。
彼はむっくりと、床の上に起き上がり、繁々と自分の肉体の突起物を眺める。
ギンギンと疼き、少し摩擦しても、ビュッと飛び出しそうだった。
こんな激しい性欲が起こったのは、此処ニ三年来、覚えがない。
彼は、大きく息をついた。
さっきの風呂場で、菊枝が触った所為だと思うのだ。
思い切って菊枝の部屋へ行って遣ろうかとさえも考えた。だがそんな勇気は無い。
彼は又仰臥した。手は男根を握って、うつらうつらと、眠りに落ちた。
ふっと胸元を押さえつけられる圧迫感に目が覚めた。
開け様としても、直ぐには開かない眼にボンヤリと映る女の顔。
ハッ、と起き上がろうとしたが誰かに押さえへ着けられていた。
ハッキリと意識が目覚めると、
菊枝が、何時の間にか自分を押さえつけて居る事が判って、隆史は俄然とした。
「お願いよ、邪険にしないでよ・・・可愛がってよ。あぁぁ、あたし苦しいのよぅ」
菊枝の手は、男根をつかみ、自分の秘部に押し込もうと焦っていた。
隆史は夢中で、菊枝を突き飛ばし、跳ね起きた。
菊枝の身体は、畳の上で浴衣の裾を乱し、しどけなく仰向けザマに倒れて居た。
隆史の目が白い脚のくねる中の一点に焼き付くように焦点を合わし動かなかった。
そこには密林の如く陰毛の茂る甘い歓楽の泉が、
うづ高く盛り上がって招いて居る様で有った。
隆史は、頭がクラクラと成った。自制しょうとする理性と欲望とが激しく戦った。
彼は目を閉じた。だが、眠をつむると聴覚が鋭敏になる。
「あぁ、アーァ、ひどいわ、幾ら嫌われたってあたしの思いは変わらないのよ、
嫌われれば、嫌われるほど恋しさが増すのよ。あぁぁぁ切ないよ・・隆史さん」
女の切々たる哀願する如き、訴える如き声音が胸をえぐる様に響く。
パチリと眼を開けば、菊枝の股が大の字になり開かれ、モジモジと動いて居た。
(もう駄目だ)
隆史は、獣になった。どうなったって構うもんか・・・そう思ってしまうと、
噛み付く勢いで、菊枝の肉体に飛び掛かっていった。
燃える情熱の肉体は、ぴたと抱擁して、火花を散らすばかりだった。
焦りまくって、巧く挿入出来ないペニスがコネコネ膣口突き回した。
「あーっ、あーっ・・・ハッ、ハッ、ハーッ、あぁぁっ、早くしてっ・・・」
臼の様にくねる女の腰。うねる男の腰。二人は狂い出しそうだった。
やがて、ぐーっ、グリグリグリと関門を突き破って、
熱を含んだ男根が、陰門に力強く突入していった。
「うーっ!あぁぁぁぁ・・・はぁぁぁぁ・・・・すばらしいわ・・・
あぁぁ、いい気持ち・・・いいわぁ、いいわぁ、いいわぁ・・・
隆史さん、うれしいわ・・・」
グッと奥まで尖端が届いたと思ったとき、ドクッ!と大きく男根が痺れた。
(あぁっ、いったぞ!)
隆史は、無上の快感に恍惚となった。
だが女は、未だこれから快楽の世界が続くものと思い、
一生懸命に腰を振り回していた。
「あぁぁ!、もっと、強くしてっ!グッと突いてよ・・・」
『俺は、もう済んだんだ。』
「えぇ?済んだ?そんなぁ・・・イヤイヤイヤヨッ・・・イヤヨッ、イヤヨッ・・・」
菊枝は、彼に取り付いて、押し込まれた男根を抜かせまいとする。
だが揉み合ううちに、勢いの萎えた男根は、するりと抜けてしまった。
「ううん、いやあだぁ。隆史さんたら、そんなに早くいっちゃうなんで・・・・」
『俺は早漏で、何時も女を喜ばせる前に終ってしまうんだよ』
隆史は、早漏で女を喜ばし切れない事を、殊更に強調してテレて見せた。
満たされない性欲を、やっと望み叶って一口食べたと思ったら、
ほんの舌先だけで味わったばかりで、喉を通る美味しさを味わう程には、
至らなかったという想いが菊枝には残った。
菊枝は其れ以降は隆史を色仕掛けで誘う事が無くなった。